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腎臓病について

<腎臓の働き>

腎臓は血液内の老廃物を尿に排泄するフィルターの役割を担っています。また尿の生成過程では必要な栄養分や水分を再吸収する役割もあります。その機能により、血液の性状を保ち、身体の恒常性(常に安定した状態)を維持しています。その他にも、血圧を感知し調節する役割やエリスロポエチンという赤血球を作るように促すホルモンを産出しています。このように腎臓は、フィルターの役割だけでなく、循環においても重要な役割の一部も担っています。

 

腎臓

 

 

<腎不全について>

腎不全とは、腎機能が低下した状態のことを言います。

腎機能低下は、脱水、大量出血、心疾患・血液疾患、腎疾患、尿路障害などの疾患や、全身麻酔・薬物などの負担、肥満、食事環境、遺伝的要因などの中毒・生活環境・体質などによっても引き起こされます。

腎不全を病態別に分類すると、腎前性、腎性、腎後性に分けられます。

腎前性とは腎臓の前に病因があるもの(心臓、血液など)、腎性とは腎臓自体に病因があるもの、腎後性とは腎臓の後に病因があるもの(尿管、膀胱、尿道など)を指します。

急激に腎機能が低下し急性腎不全に至った場合、早期に治療を開始し腎臓の組織障害が軽度のうちにその原因を取り除くことができれば、回復することがありますが、多くの場合は慢性腎不全に移行し、皮下点滴・内服療法・食事療法などの長期の補助療法が必要となります。

腎臓2

 

 

腎臓3

 

 

<症状>

初期の症状は、気づかれないことも少なくありません。また前述の原因が異なると症状も異なる場合があることと、慢性腎不全と急性腎不全でも症状が異なることもあるので気をつけましょう。

 

・水をよく飲む/おしっこが多い(多飲多尿)  ・おしっこが赤い(血尿/血色素尿)

・おしっこが出ない(乏尿/無尿/尿管・尿道閉塞)

・元気消失  ・食欲減退/食欲廃絶   ・嘔吐  ・下痢  ・毛づやが悪い

・体重減少  ・口臭が強い  ・口内炎/口腔内潰瘍  ・腰部の痛み  など

 

 

<腎機能低下の原因>

感染性:細菌感染・ウイルス感染 など

炎症性・自己免疫疾患:腎炎・リウマチ・腎硬化症 など

腫瘍性:リンパ腫・腎腺癌・腎芽腫 など

外傷性:交通事故・落下事故 など

心疾患:心不全・弁膜症・心筋症 など

尿路疾患:尿管/尿道閉塞・膀胱炎・尿石症 など

膵炎⇒炎症の波及・脱水・菌血症・敗血症 など

内分泌疾患:甲状腺機能異常・副腎皮質機能異常など

糖尿病:糖尿病性腎症

溶血性疾患:ヘモグロビン血症

老化⇒組織変性・機能低下 など

生活環境・体質:食事環境・肥満・脱水 など

遺伝的要因:多発性嚢胞腎(ペルシャ・アメリカンショートヘア・スコティッシュホールドなど)

薬物:エチレングリコール(不凍液)・水銀 など

特発性;原因不明

など

 

 

<検査・診断>

血液検査:貧血、白血球数、血小板数、血液塗抹標本など

生化学検査:BUN、Cre、Ca、IP、Na/K/Cl、ALB 他の疾患の有無

血液特殊検査:CRP、免疫学的検査(クームス試験・血液凝集検査・抗核抗体検査)、犬シスタチンC

各種細菌・ウイルス抗原抗体検査または遺伝子検査、内分泌ホルモン検査 など

X線検査:腎臓の形状、大きさ、位置、腎盂陰影、線維化・結石の有無

尿管、膀胱、尿道の状態

他の疾患の有無

超音波検査:腎臓の形状、大きさ、位置、変性、腫瘍

造影検査:静脈性尿路造影、膀胱・尿道造影(陽性造影、陰性造影、二重造影)

尿検査:一般尿検査、沈渣、尿タンパク/クレアチニン比

機能検査:PSP排泄検査、クレアチニンクレアランス試験

CTMRI検査 など

 

 

<治療>

まず、検査にて急性腎不全を引き起こす直接的病因(腫瘍や結石による尿路閉塞、重度感染症、循環不全など)が判明した場合は、直接的病因にすぐにアプローチすべきか、応急的処置(膀胱穿刺など)や腎機能の改善治療を優先すべきかを判断します。直接的病因の判定に時間がかかる場合や慢性経過の急性化、原発性の腎不全などは、出来るだけ早期に腎機能改善のための治療を開始します。

 

静脈点滴

一般的に入院が必要な治療法です。腎臓の保護と負担の軽減を目的とする治療であり、副作用は感染や心負荷・肺水腫などが考えられます。細かいモニターを行いながら、腎の負担軽減と心負荷のバランスを調節し治療をすすめていきます。早急な腎機能の改善が求められる仔に必要な治療法となります。

急性腎不全では、病態の改善が認められたとしても完治は難しく、その後慢性腎不全に移行し、皮下点滴が必要なケースが多いです。(いかなる病因であったとしても腎組織に障害を受けてしまうと、障害を受けた組織は完全には戻りません)

また高カリウム血症のコントロールが難しい際は、高張糖液+インシュリン輸液療法を行うこともあります。(高カリウムによって循環器に障害が生じる際に使用します。カリウムを細胞内に移行させる効果があり一時的に循環器障害を防ぎますが、体内の総カリウム量は変化しません)

 

皮下点滴

外来診療での治療が可能な方法です。静脈点滴と同様に、腎臓の保護と負担の軽減を目的とする治療ですが、効果は静脈点滴に劣ります。副作用に関しては、静脈点滴の心負荷より軽減されます。慢性化した症例や入院による静脈内点滴の治療が難しい方に適用されます。処置時間は比較的短時間(5分~10分程度)で、回数は週3回必要な方から2週間に1回の方まで様々です。基本的に肩部付近の皮下に輸液を入れるため、終了後は肩部に輸液の溜まった隆起が触知されます。まれに点滴部位の違和感や痛み、発熱を伴うこともありますが、一過性です。

 

腹膜透析

麻酔処置を行い腹腔内にカテーテルを留置し、腹腔に透析液を貯め、浸透圧差により老廃物を腹膜から貯留透析液に移行させ回収する方法です。高窒素血症の改善効果は点滴治療に比べると高いですが、麻酔が必要なことと、電解質漏出・一部栄養素の漏出などが短所となります。またカテーテル部からの感染や腹膜炎にも注意が必要です。

 

血液透析

人工透析機により老廃物を除去する治療方法です。初めに麻酔下でカテーテルを装着し、身体の外に出した血液を人工透析機に通して老廃物を取り除いて体内に戻します。設備、費用、貧血、感染症、栄養素の漏出、電解質漏出などが問題点になります。当院では設備がないため行うことができません。

 

 

腎移植

一部の大学病院にて行わられています。併発疾患の有無、倫理、麻酔・手術、免疫抑制剤の長期投与などが問題点となります。当院では、倫理的観点から推奨しておりません。

 

補助療法

胃腸治療、電解質補正、ビタミン剤投与、腎血流改善薬(ドパミン、ブクラデシンなど)、利尿剤(水和状態かつ尿量が少ない場合に使用)、蛋白同化ホルモン、抗生物質(治療と予防)、免疫療法など

 

食事療法

原発の腎機能障害の場合、低タンパク質食が推奨されることが多いです。その他にも病因によって療法食を選択します。例えば、基礎疾患として尿石症がある場合は、その尿石の種類によって療法食を選択します。またその仔の病態によって電解質(ナトリウム・カリウム)やカルシウムの摂取量を考慮します。

ただし、低タンパク質食は高脂肪食になってしまいます。これは三大栄養素(タンパク質・脂肪・炭水化物)のバランスと必要エネルギー摂取量の関係で避けられません。したがって高脂質血症などの併発疾患がある仔の場合、タンパク質と脂肪のバランスを考慮した食事を選択するなどの注意が必要です。

食事管理・衛生の面では、低タンパク高脂肪食は酸化しやすい(腐食)ので、食事を使い切る期間や保存方法・与え方(置きっぱなしにしないなど)などの配慮が必要です。

 

内服薬

ACE阻害薬:酵素の阻害により末梢血管を拡張し血圧を落とすお薬です。腎臓では輸出細動脈を拡張し、糸球体(腎臓の組織)内圧を低下させることにより直接的に腎臓の保護作用があります。

副作用:低血圧

糸球体内圧低下時(重度腎不全)の使用は要注意

重度肝障害のある仔では要注意

ヒトでは咳の副作用報告がありますが、動物ではほとんど認められず

 

アムロジピン:カルシウムブロッカー。動脈の平滑筋収縮に必要なカルシウムイオンの流入を抑制し、末梢動脈を拡張させ血圧を落とすお薬です。高血圧を伴う腎臓病で適応されるお薬です。腎臓では輸出細動脈を拡張し、糸球体内圧を低下させます。

副作用:低血圧

重度肝障害のある仔では要注意

 

吸着炭・リン吸着剤:食事内の窒素化合物やリンを吸着し、腎臓で排出される物質が体内に入ってくる量を減らすことで腎臓の負担を軽減します。

副作用:胃腸症状

便色が黒色(吸着炭:経過観察可)

 

抗生剤:感染の治療と予防を目的に使用します。重症例や胃腸症状を伴う場合は、注射薬を優先します。抗菌スペクトル(効いてくれる細菌の種類の幅)や組織移行性、排泄能を考慮し、薬剤・量を決定します。

副作用:抗生剤の種類による

 

鉄剤・栄養補助品:腎性貧血の補助治療として使用します。

副作用:胃腸症状

 

⑨エリスロポエチン

エリスロポエチンを投与し、腎性貧血を改善させます。製剤はヒトのエリスロポエチン製剤であるため、異種ホルモンの投与になります。したがって投与回数が増えると抗体がつくられ、効果が減弱してしまう可能性があります。

 

手術

病因・病態によって、腎臓、尿管、膀胱にアプローチする外科手術が検討されます。

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