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胆泥症・胆石症について

 

胆嚢は、胆汁を産生し貯留する器官です。胆汁には、脂肪を分解し水に溶けやすい状態に(乳化)する役割を持っています。

胆嚢に貯えられた胆汁は、元々サラサラの水様性液体ですが、成分が変化するとドロドロの胆泥(胆泥症)や石のように硬い胆石(胆石症)を形成します。軽症の場合は無症状のことがほとんどですが、形成された胆泥や胆石が胆管に詰まったり、胆嚢の重度炎症が起きたりすると重症化し、命に関わる状態に陥ります。(胆管閉塞、胆嚢破裂、腹膜炎、胆嚢炎、胆管肝炎、腫瘍疾患など)

また胆嚢疾患から肝臓疾患を併発することも多く、肝臓も「沈黙の臓器」と呼ばれ、初期の状態では症状を呈しませんが、発症するとその時点で肝機能の約5~8割が障害を受けていることが多いため、症状がなくとも危険な状態である可能性があります。

 

胆嚢1

 

 

<症状>

○嘔吐・下痢;黄色~緑色液体や未消化物を吐く、水様~泥状の便 など

○脂肪便;白色の便

○元気・食欲の低下・廃絶;食べない、食べる量が減った など

○腹部疼痛;お腹を触ると嫌がる・威嚇する・口をクチャクチャさせる、歩かない など

○腹囲膨満・腹圧上昇;お腹が膨れている、呼吸が荒いようにみえる など

○発熱;耳介・腋の下・腹部などが熱い など

○黄疸;耳介の内側・歯肉・眼の白いところ(強膜)が黄色 など

○血圧低下・ショック;ぐったりしている、耳介の内側・歯肉・眼の白いところ(強膜)が白い など

 

 

<原因>

生活環境:食事量や質、肥満、運動量、老化

体質・遺伝的要因・種(特にシーズー、シェルティ、ダックス、シュナウザーなど)

甲状腺機能低下症

糖尿病、膵炎

肝・胆道系疾患

高脂血症

合併症

薬剤・中毒 など

 

 

<検査>

血球計算検査:貧血、血小板減少、白血球増加

生化学検査:ALP、GGT、TG、Tcho 上昇

その他肝酵素の上昇

他 基礎疾患の数値異常

合併症による数値異常

Lipo Test:脂質代謝異常の検出

X線検査:肝腫大、胆嚢の陰影・胆石

肝・胆嚢腫瘍

腹膜炎

他の疾患の発見

超音波検査:胆嚢の形状、大きさ、壁の状態

胆泥・胆石・腫瘤の状態

胆管の評価

肝臓・血管系の評価

他 胆嚢造影生検CT など

 

 

<治療>

○どの時点で治療をはじめるか?

胆泥が認められた時点で治療や環境の改善を行わないと今後の進行が予測されます。初期にはほとんどが無症状であり、病気に気づかれていらっしゃらない場合も多いです。無症状のことが多いため、経過観察をご希望されるケースもありますが、胆泥症で一番問題になるのは、胆管が閉塞し、急性胆管肝炎や胆嚢破裂によって重篤化し生命の危険にさらされるリスクがあることです。

当院では、そのリスクを極力抑えるためにも早期治療を推奨しています。その他の基礎疾患が無い場合、胆泥の状態によっては生活環境の改善だけでも十分な効果が認められる場合もあります。

 

○内科治療?外科治療?

前述の胆泥症のリスクをなくす観点から考えると、外科手術による胆嚢切除が早期にリスクをなくすことが出来る治療法となります。しかしながら胆嚢切除の手術自体のリスク(腹膜炎など)もあり、治療方針は飼い主さんとしっかりと相談し設定していく必要があります。当院では、胆泥に対する積極的な内科治療も実施しています。食事療法をベースに下記治療法からその仔の病態に合わせて選択・服用し、胆泥量をどこまで減らすことができるか、あるいは悪化させず維持できるかが目標となります。しかしながら、重篤化した仔や急性期疾患の仔には、外科手術が唯一の治療法になることも少なくありません。

 

<治療内容>

  1. 生活環境の改善:良質・適正量の食事(低脂肪食)、開封後早期食べきり(脂肪の酸化防止)、運動
  2. 抗菌薬・抗生物質:特に広域・嫌気性菌に効果のあるもの
  3. 強肝剤:タウリン・グルタチオン・グリチルリチン・チオプロニン・アミノ酸(グリシン・メチオニン・分岐鎖アミノ酸など)
  4. 利胆剤:ウルソデオキシコール酸(水利胆剤)・トレピブトン(オッジ括約筋弛緩作用)など
  5. 胆嚢収縮改善薬:エリスロマイシンのモチリン様作用
  6. 脂質代謝改善薬;肝機能障害・横紋筋融解に注意
  7. 漢方:荷花掌、大柴胡湯など
  8. 甲状腺ホルモン
  9. ステロイド:免疫介在性疾患
  10. その他基礎疾患の治療
  11. 外科手術:胆嚢十二指腸バイパス術、胆嚢摘出術
  12. その他:サプリメント など

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